靴の色は黒か濃い茶色がお薦めです。ネイビー・チャコールグレー・黒などのスーツにはどちらも合わせやすく、印象も落ち着きます。ただ薄めの茶色の場合、それ自体はオシャレな靴ではありますが、コーディネートが難しく、汎用性が低いといえます。ですから、まずは黒2足に濃い茶色1足、黒2足のうち1足はフォーマルでも活用できるストレートチップを選ぶのが良いでしょう。なぜ3足をお薦めするのかというと、1足の靴を履きつぶすのではなく、最低でも3足をローテーションして履くことで、靴に休息を与え、より長持ちさせるためです。靴は1日中履くことによって、汚れるだけでなく、コップ半分ぐらいの汗を吸収して、相応のダメージを受けています。これを毎日履き続けると、すぐに傷んでしまいますので、―日履いたら2日休ませるといった休息が必要なのです。革は天然素材ですから、休息を与えることによってダメージが回復し、長い間履くことができるようになります。
リング丈のオーバーコートを久し振りに新調した。その前のものは紺のカシミア、ダブルボタンでたっぷりした身幅のトラッドなもの。今回はキャメル地のプリンセスライン、衿はへちまカラーだ。娘と二人旅のロンドンで、円が強いこともあって日本で買うよりはずっと安い、というのがインプットされていて、娘も私も舞い上がっていた。私がコートを買ったら娘はニットのジャケット、私かモカシンの靴を買ったら娘はヒールのある編み上げ靴、というふうだ。娘との二人旅は気楽で楽しいけれど、お金が倍出ていく、ということを痛切に感じた。行く前は、「ゆっくりのんびりした旅にしようね、画板を持っていってバイトパークで一日絵を描いたり、動物園に行ったり、お金を使わなくてもいいしね」
日中の正装はプロッタ・コート、夜の正装はイブニング・コートというドレスーコードが厳格に守られていた一八六〇年代、寛ぎのためのインフォーマルな服として、ラウンジージャケットが登場する。ウエストに切り替えのない、いわゆる袋型、というか筒型の丈の短いジャケットである。上着に関しては、従来、縫目の線が五本必要だったのに対し、背中線、両脇線の三木ですむようになったので、「スリーソーマーズ」とも呼ばれる。なぜこれが寛ぎ着になるのか?ダイニングールームでは尾がつき、体にフィットする燕尾服を着ていた時代である。食後、ラウンジールームに移って食後酒やタバコをたしなみながら談笑するときにはソファでゆったり寛ぐのであるが、その時には尾がついているとどうも邪魔であるし、なんといっても堅苦しい。尾もなく、身頃にダーツ(布を立体化させるため、体の凹凸に沿ってとった錐形のつまみ)すらないゆったりしたジャケットが寛ぎの気分にかなったことは想像に難くない。このラウンジ専用ジャケットがやがて友人や家族と寛ぐときのカジュアルーウエアとしても着られ始める。